単結晶ダイヤモンド工具のデメリットとは?
超精密加工には、単結晶ダイヤモンド工具が多く使用されています。これは、高硬度かつ刃先形状が高精度であること、さらに熱伝導率が高いことが理由としてあげられます。しかし、単結晶ダイヤモンド工具には大きなデメリットも存在します。ここでは、単結晶ダイヤモンド工具のデメリットについて説明いたします。
単結晶ダイヤモンド工具の欠点①:へき開性による脆さ
単結晶ダイヤモンド工具のデメリットの1つ目は、脆くて割れやすいという「へき開性」です。
ダイヤモンド構造は高硬度である一方、へき開面と呼ばれる割れやすい結晶面を持っています。ダイヤモンドでは(111)面がへき開面にあたり、この面においてはダイヤモンドが割れやすくなっています。同様にダイヤモンド構造である単結晶シリコンも同様にへき開面を持っています。その結晶性ゆえに硬くて脆い、ガラスのような硬脆材料としてダイヤモンドは知られています。
そのため、単結晶ダイヤモンド工具を使用する際は、このへき開面を考慮して使用する必要があります。使用する刃先においてへき開面を避けるだけで、工具摩耗のスピードが大幅に軽減されます。特に単結晶ダイヤモンド工具を用いてレンズ金型の旋削加工を行う際は、レンズ形状にそって工具とワークの接点が変化するため、へき開面をさけるように工具のセッティングをするなどの工夫が必要になります。
単結晶ダイヤモンド工具の欠②:炭素拡散反応による急激な摩耗
単結晶ダイヤモンド工具のデメリットの2つ目は、炭素拡散反応によって急激に摩耗してしまう点です。
ダイヤモンド工具で鉄系材料を加工すると、熱化学反応により工具側の炭素原子が鉄系のワークへと拡散してしまいます。そのため、ダイヤモンド工具で超硬合金やSTAVAX等の鉄系材料を加工してしまうと、その親和性の強さのために急激な工具摩耗が発生してしまいます。摩耗した工具で加工を続けてしまうと、ワーク表面に工具の摩耗部分が転写されてしまい、ワークの仕上げ面も悪化してしまいます。
そのため、鉄系材料を切削する際には、超硬工具を使用したり、工具にあらかじめコーティングを施すなどの工夫が必要となります。
単結晶ダイヤモンド工具の欠点③:工具が非常に高価
単結晶ダイヤモンド工具のデメリットの3つ目は、工具自体が非常に高価という点です。
単結晶ダイヤモンド工具に使用されるダイヤモンドは、宝飾品のような自然のものではなく、すべて人工物です。この人工ダイヤモンドを製造するために、各ダイヤモンド工具メーカーは非常に高価な装置によって工具を製造しています。そのため、ダイヤモンド工具は他の超硬工具などと比較して非常に高い工具となっています。
上記の通り、単結晶ダイヤモンド工具は割れやすく摩耗もしやすい、非常に繊細な工具です。さらに高価というデメリットが加わることで、気軽に使用しづらい工具として扱われてもいます。また、工具が摩耗した際には再研磨をすることで再び使用することができますが、単結晶ダイヤモンド工具の再研磨も比較的高価な作業のため、単結晶ダイヤモンド工具を使用する際は十分に注意し、かつ一本の工具でどれくらい加工できるかという段取りも考慮することが重要となります。
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