フレネルレンズとは?原理から用途、製造方法まで!
近年需要が高まっている「フレネルレンズ」ですが、歴史や原理、および利用場所については非常に古くからあったものの、近年発達してきた最新のフレネルレンズの形状や用途、製造方法については、まだあまり知られていません。
ここでは、精密フレネルレンズを製造する超精密・ナノ加工センター.comが、フレネルレンズについて、その構造や用途、製造方法についてまとめていきます。
フレネルレンズとは?構造と由来について
まず、フレネルレンズについてです。
フレネルレンズとは、英語で”Fresnel Lens”と書き、球面レンズや非球面レンズを同心円状に分割して、レンズとしての厚みを減らしたノコギリ状の断面を持つレンズのことを意味します。平面ではありますが、レンズの曲率部分(プリズム)が並んでいるため、レンズとして機能することができます。また、フレネルレンズは凹レンズも凸レンズも製作することが可能です。
ちなみにフレネルとは、オーギュスタン・ジャン・フレネルというフランスの物理学者に由来しています。フレネルは、光の反射や屈折・回折・干渉・偏光に関する研究において卓越した業績を残しており、彼が灯台に使用される反射鏡の代わりとして複合レンズを開発したため、彼の名前であるフレネルがレンズの名前に使用されているとされています。
フレネルレンズのメリット・デメリット
フレネルレンズのメリットは、軽量化と小型化です。まず、レンズを通常の厚みから薄くすることができるため、薄くなった分だけレンズの重量を少なくすることができます。また、レンズが全体的に薄くなるため、レンズやレンズ周りの薄型化や小型化につながります。
しかし、フレネルレンズは分割数を多くするほど薄くなる一方、同心円状の線が多く入ってしまったり、回折の影響によって画質悪化につながる恐れがあることがデメリットとしてあげることができます。
フレネルレンズの用途
フレネルレンズは、主に集光、拡散、拡大鏡という3つのアプリケーションがあります。
まず集光・拡散目的としては、古くは灯台や投光器、各種信号機用レンズ、サーチライトやスポットライトなどの幅広い照明系レンズに用いられておりました。その他、カメラの視野レンズ・フラッシュレンズや、最近ではプロジェクター用高輝度スクリーン、集光型太陽光発電用レンズ、LED照明、各種光学センサー用など、幅広い分野で使用されています。
また、平板にフレネルレンズが作られることで、簡易的な拡大鏡として使用されることもあります。
(カード状の拡大鏡をご存知の方もおられるのではないでしょうか。)
さらに近年では、片方側からだけ集光・拡散をすることができるリニアフレネルレンズも需要が高まっています。
フレネルレンズの製作方法
フレネルレンズの多くはアクリルなどの樹脂製かガラス製です。
ガラスを利用した大量生産を目的としたフレネルレンズでは、半固体状の熱せられたガラス材をフレネル形状の金属型を装着したプレス機のところまで搬送し、そのままプレス成型することでフレネルレンズを作成するモールド式での製造方法が一般的です。
この製造方法の歴史は古く、日本では大正時代までさかのぼることになります。
現在ではフレネルレンズを多く用いられていた信号機、表示機、照明器具の光源自体がLEDに置き換わり、熱を発生しないため樹脂製のフレネルレンズに置き換わった物やLEDのみで発光特性を満たせるものが開発されたため、ガラス製フレネルレンズの用途は限定的になっています。
樹脂製フレネルレンズは、量産の製造方式として一般的に2種類あり、
プラスチックの板材を直接プレス機で挟み込むことによって成型するプレス方式での製造方法や
射出成形によって製作されます。
プレス方式で作成されるフレネルレンズの特徴一番の特徴は薄板で大判のフレネルレンズが作成できるという利点があります。
(Φ1m程度の大きな製品も製造されています)
射出成形によるフレネルレンズは現在最も身の回りに数多く存在しています。スマートフォン用カメラのLEDフラッシュの拡散用レンズの多くがこれにあたり、数量もさることながら現在数多くの形状が使用されています。
このフラッシュ用のフレネルレンズは形状、精度共に非常に高精度かつ鏡面性が求められるため、成型用の金型は超精密加工機によって加工されています。
また変わった用途の製品として、赤外線のコントロールのみに主眼に置いた単結晶シリコンやゲルマニウムを使用したフレネルレンズもあります。これらの素材は可視光は通さず赤外光線のみ透過するという特殊な特性があります。
これらのフレネルレンズ以前は従来砥石を利用した研削工法で加工されていましたが、
最近では特殊な切削方法(超音波振動を用いたダイヤモンド工具での旋削加工)での製造方法が注目されています。
ところで、スマートフォンのフラッシュの成型に利用されるような超精密金型を作製する場合、レンズ加工の際の谷部分の径(丸み半径)に注意が必要です。フレネルレンズの谷部分が鋭利であればあるほど、しっかりと集光するレンズの役目を果たします。一方、フレネルレンズの谷部分に丸みが残ったままだと、設計値通りの光の出射が正しく行われなくなり、集光量の減少やフラッシュ用途であれば照射範囲に光ムラが発生したり、照度不足が発生するなど狙った性能に対して致命的な欠陥が発生する場合があります。
そのため、超精密フレネルレンズを加工する際は、工具管理がきちんと施されている超精密加工業者に依頼する必要があります。
フレネルレンズ金型の加工事例①:大口径フレネルレンズ金型
続いて、実際に当社が製作した加工実績のご紹介です。
1つ目は、プラスチックレンズを成形するために用いられる超精密非球面金型です。超精密研削加工によって仕上げ加工を行い、PV値は最大で約0.15μm、表面粗さは約5.0 nmRaと、高精度加工とナノレベルの表面粗さを実現いたしました。
フレネルレンズ金型の加工事例③:STAVAX製 フレネルレンズ金型
こちらは、超精密非球面加工機ULG-100D(SN3)で超精密切削加工を施したフレネルレンズ金型になります。ピッチ精度1μmを実現しました。
高精密加工・超精密加工は、超精密・ナノ加工センターにお任せください!
当社では、多種多様なフレネルレンズの加工実績が多数ございます。
超精密・ナノ加工センター.comを運営する株式会社木村製作所では、超精密加工に特化した「ナノ加工研究所」にて、日本屈指の超精密加工を行っております。超精密レンズ金型・マイクロレンズアレイを中心とした加工実績も多数ございます。
また当社は、チタンなどの難削材加工も得意としており、超精密とまではいかないものの寸法精度±0.001 mmが求められるベアリングやシャフトなどの機械部品に対する高精密加工に対応しております。
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