9種類の光学用鏡面ミラーと各々の用途について|超精密加工のポイント・加工事例についてもご紹介!
近年需要が高まっている光学用鏡面ミラーですが、実は表面が平面のものから球面、あるいは自由曲面のように複雑なものまで様々な形状のものがあります。
そして、そうした様々な形状の鏡面ミラーを高精度に加工するためには、切削・研削・研磨の超精密加工における高い技術力が求められます。
本コラムでは、光学用鏡面ミラーの種類についてのご紹介を中心に、超精密加工のポイントから当社が実際に行っ加工事例まで、詳しく解説いたします!
超精密加工とは?
まず、超精密加工という言葉の定義についてです。
超精密加工とは、英語で「Ultra-Precision Machining」と呼ばれ、最大で1/1000 μmというスケールにおける加工精度を達成することができる加工のことを指します。1000分の1 マイクロメートル=1ナノメートルとなるため、超精密加工=ナノスケールの加工精度と捉えることができます。
>>超精密加工とは? 定義と技術特徴について
一般的に、「精密加工=マイクロスケール」なので、精密加工と比較して1段階高精度なのが超精密加工です。
>>精密加工と超精密加工の違いとは?
光学用鏡面ミラーとは?
光学用ミラーとは、金属やガラスなどの基板材をミラーとして使用する光学部品(オプティカルパーツ)の一つです。使用用途は光路調整で、その用途は日用品から宇宙分野まで幅広くなっています。通常はアルミ真空蒸着コーティングが施されるものの、アルミ以外の金属膜でコーティングすることにより、特定波長における反射率を引き上げたり 95%以上の高反射率ミラーにしたりすることも可能です。
光路調整の対象となる光も、可視光から赤外光、紫外線、X線まで、幅広い対象があり、その使用用途によって光学ミラーとして必要な精度も変化します。
>>鏡面加工とは?鏡面研磨との違いと鏡面加工に高い技術が必要な理由。
光学用鏡面ミラーの種類と用途
光学用鏡面ミラーを表面の形状で分類すると、平面ミラーと曲面ミラーという2つに大別されます。そして、さらに細分化すると実に9種類に分類することができますので、詳しくご紹介していきます。
①光学用 平面ミラー
平面ミラーは、ナノレベルの表面性状は当たり前のレベルになり、最も精度が必要とされます。用途としては、光学用の実験機器や光学機器のアライメントなどに使用されます。
②光学用 曲面ミラー
曲面形状を超精密加工して良好な鏡面を得るためには、1刃あたりの送り量を小さくする必要がありますが、そうなると送り速度が遅くなり、加工時間が長くなってしまいます。加工時間を伸ばさずに要求された面粗度を満足するためには、回転数を上げることが有効です。これにより、刃の切削特性が向上し、加工面も高品位な曲面になります。
③光学用 球面ミラー
球面ミラーには、凹面鏡と凸面鏡の2種類があります。平面ミラーよりも優れた集光性能を持っていますが、非点収差、すなわち点光源から放たれた光の焦点距離がずれることにより1点に集光されない現象が起こる点がデメリットになります。
④光学用 非球面ミラー
非球面ミラーの超精密加工は、球面ミラーのそれと比べて難易度が格段に上がります。その理由は曲率の複雑さにあります。
通常の球面ミラー成型用のミラー金型を製作する際は、ミラーの径とR径から加工プログラムを作成すればよいのですが、非球面形状の場合は誤差が生じやすく、高精度・高品位の加工を施すことが簡単ではありません。
非球面ミラーの種類としては、以下に示す放物面ミラー、楕円ミラー(楕円面ミラー)、双曲面ミラー、自由曲面ミラーなどがあります。
⑤光学用 放物面ミラー(非軸放物面ミラー・軸外放物面ミラー・OAPミラー)
放物面ミラーとは、点光源からの発散光をコリメート光(平行光)に変換する非球面ミラーです。通常の球面凹面ミラーよりも平行光を高効率に取り出すことができます。球面ミラーは非点収差を発生させてしまうのに対し、放物面ミラーは入射光を一点に集光させる能力が非常に高いミラーになります。非軸放物面ミラーもしくは軸外放物面ミラー(OAPミラー)と呼ばれることもあります。主な用途として、顕微鏡の高輝度ランプハウスがあります。
⑥光学用 トロイダルミラー
トロイダルミラーとは、直交する2軸(水平方向と垂直方向)の曲率が異なる非球面ミラーです。放物面ミラーと同様に、非点収差(球面収差)の発生を抑制し、ほぼ1点に集光することが可能です。この性質を活かして、分光器の集光素子や収差補正の目的で利用されています。
⑦光学用 楕円ミラー(楕円面ミラー)
楕円の特徴は、焦点を2つ持っている点です。楕円ミラーとは、この楕円の性質を活かして、一方の焦点から出た光を反射して、もう一方の焦点に集光する構造になっている非球面ミラーのことを指します。楕円面鏡・楕円面ミラーと呼ばれることもあります。用途としては、太陽光を人工的に作り出すソーラーシミュレータや半導体・液晶などの露光装置に使用されています。
⑧光学用 自由曲面ミラー
自由曲面ミラーとは、球面や放物面、非球面とは異なり、回転対称性がない光学面をもつミラーのことです。通常の球面ミラー、放物ミラー、非球面ミラーでは、光軸に対して回転対称性を持っており、超精密旋盤にて加工されます。しかし自由に形成された自由曲面ミラーは、回転対称性がないため、一般的な超精密旋盤では加工することができません。
自由曲面ミラーで生成される自由曲面は、特別な方程式や点群で構成された光学面のため、屈折面や反射面が通常のミラーとは大きく異なります。
自由曲面ミラーは、従来は複数のミラーが必要だった箇所にも1つのミラーで対応できる場合があり、金属基板ミラーとしても現在需要が高まっているミラーの1つになっています。
⑨光学用 双曲面ミラー
双曲面ミラーは、円錐ミラーと球面ミラーの両方の長所を兼ね備えた、焦点を2つ持つ非球面ミラーです。
その特性を活かして、全方位カメラや全方位センサなどに使用されています。
光学用鏡面ミラーの超精密加工におけるポイント
光学用鏡面ミラー(金属基板ミラー)の超精密加工におけるポイントは、光学用ミラーの形状に大きく左右されます。平面のミラーであれば、超精密研磨やラップ加工が適しているケースが多くなります。しかしこれらの加工は時間的にも費用的にも非常に高価となるため、注意が必要となります。
一方、曲面形状のミラー加工の場合は、加工形状の自由度の面から、切削や研削などの機械加工による超精密加工が選ばれる場合が多くなります。超精密切削加工や超精密研削加工であれば、自由曲面などの複雑な曲面のミラーであっても鏡面加工を行うことができます。
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>>光学用ミラーの超精密加工におけるポイント
当社の光学用鏡面ミラーの加工実績をご紹介!
当社が過去に行った光学用鏡面ミラーの加工事例をご紹介いたします。
当社の光学用ミラー加工実績①:平面ミラー
こちらは、東芝機械製の超精密非球面加工機ULG-100D(SH3)を用いて超精密切削・研削加工を行った鏡面ミラーになります。STAVAX製のワークに無電解NiPめっきを施しました。
この鏡面ミラーの表面粗度はRa0.02μm。写真をご覧いただくと分かる通り、文字が綺麗に反射しており、表面粗度が非常に緻密であることが窺えます。
当社の光学用ミラー加工実績②:放物面ミラー
こちらは、超精密非球面加工機 ULG-100D(SH3)を用いて加工した超々ジュラルミン製の放物面ミラーです。サイズはΦ15mm×20mmになります。
半導体業界において、放物面ミラーはレーザーの散乱を減らし集光能力を上げる目的で使用されるのが一般的で、集光能力向上のためには高い精度が求められます。そこで木村製作所は超精密非球面加工機 ULG-100D(SH3)を用いてこれを加工、表面粗度Ra20nmという極めて高い精度を実現しました。
当社の光学用ミラー加工実績③:ヘッドアップディスプレイ用 反射ミラー金型(自由曲面ミラー)
こちらは、自動車で用いられるヘッドアップディスプレイのミラーを成型するための金型です。
上記で述べた通り、光学用ミラーを製作するためには、ナノレベルでの形状誤差を達成するための、非常に難易度の高い加工技術が必要です。
しかし超精密・ナノ加工センター.comでは、光学部品専用のCAD/CAMソフトとナノレベルでの加工を実現する超精密加工機を数台設置した「ナノ加工研究所」での知見によって、このヘッドアップディスプレイ用反射ミラー金型の製作を可能にしています。
光学用ミラーの超精密加工は、超精密・ナノ加工センターにお任せください!
超精密・ナノ加工センター.comを運営する株式会社木村製作所では、超精密加工に特化した「ナノ加工研究所」にて、日本屈指の超精密加工を行っております。当社では、光学用ミラーはもちろんのこと、超精密レンズ金型・マイクロレンズアレイを中心とした加工実績も多数ございます。
また当社は、チタンなどの難削材加工も得意としており、超精密とまではいかないものの寸法精度±0.001 mmが求められるベアリングやシャフトなどの機械部品に対する高精密加工に対応しております。
さらに、お客様の過剰品質の設計を防止するために、あらゆる角度からVA/VE提案をいたします。ナノレベルはマイクロレベルとは異なるノウハウが必要とされますが、どちらにも対応することができる当社だからこそ、最適な品質設計をお客様に提案することができます。
高精密加工・超精密加工にお困りの方は、超精密・ナノ加工センター.comまでお問い合わせください!