超精密加工とは? 定義・意味と技術特徴について
近年、光学分野や医療、半導体製造、バイオ分野などで需要が高まっているのが、超精密加工技術です。
本コラムでは、超精密加工という言葉の定義・意味から、超精密加工技術の特徴まで”超精密加工のプロフェッショナル”が徹底解説いたします!
超精密加工とは?
まず、超精密加工という言葉の定義について。超精密加工とは、英語で「Ultra-Precision Machining」と呼ばれ、最大で1/1000 μmというスケールにおける加工精度を達成することができる加工のことを指します。1000分の1 マイクロメートル=1ナノメートルとなるため、超精密加工=ナノスケールの加工精度と捉えることができます。一般的に、「精密加工=マイクロスケール」なので、精密加工と比較して1段階高精度なのが超精密加工です。
超精密加工の用途は、主に半導体分野と光学分野が挙げられます。特にマシニングセンタ等を用いた機械加工による超精密加工は、高精度レンズの製造や、光学レンズの金型を製作するために必要な技術です。
超精密加工技術の特徴
超精密加工技術の特徴は、加工精度がナノレベルであることです。高精度工具を用いて、恒温等の整った設備環境で、ナノスケールの分解能を持った工作機械を使用するという、この3つの条件がそろって初めて超精密加工を行うことができます。
高精度工具としては、主に単結晶ダイヤモンド工具が多くの企業で超精密加工用に使用されています。しかし、なぜ超精密加工に単結晶ダイヤモンド工具が使用されているのか、その理由を詳細に知っている方はあまり多くはいらっしゃいません。
>>超精密加工に単結晶ダイヤモンド工具が最適である3つの理由
もちろん、すべての材質や形状に対して単結晶ダイヤモンド工具が最適とは限りません。目的とする形状や加工したい材質によっては、別の工具材質が最適の場合もあります。
また、超精密加工では仕上げ加工を必要としません。超精密切削や超精密研削のみでナノスケールの鏡面加工を行うことができるため、研磨工程が不必要となる磨きレス加工であるのが超精密加工の特徴です。
>>鏡面加工とは?鏡面研磨との違いと鏡面加工に高い技術が必要な理由
材質ごとの超精密加工の特徴
超精密加工は、材質によって大きく左右されます。切削領域が非常に微小となるため、ナノレベル・原子レベルでの切削現象が加工精度に大きく左右するためです。そのため、材質ごとに超精密加工の方法も大きく変わってきます。
超精密加工は光学業界に使われるレンズ金型に対して使用されることが多いため、レンズ金型に使用される材料に対する超精密加工が最もニーズが高いと言えます。特に有名な材質としてはSTAVAXがあげられます。
STAVAXは優れた耐食性、耐摩耗性をもつステンレス鋼であり、光学分野や医療分野など幅広い業界においてニーズが高まっております。しかしその優れた機械特性ゆえに、STAVAXの機械加工は非常に困難とされています。またSTAVAXは、超精密金型としても需要が多くありますが、ナノレベルの面精度を出すのは至難の業です。
そのため、超精密加工によって加工される光学レンズ金型などの高精度部品は、無電解ニッケルメッキ(NiP)を施されている場合が多くあります。
また当社に頻繁にご相談いただくのが、難削材に対する超精密加工です。難削材には被削性指数という指標もありますが、超精密加工の分野においては役立たない面もあるため、実績がある企業に難削材の超精密加工は依頼するのが良いと言えます。
超精密加工の領域において多い材質は、炭化ケイ素です。炭化ケイ素(SIC)は、ファインセラミックスの中でも優れた機械特性を持った材料で、近年需要が高まっている材料です。しかし、その優れた機械特性ゆえに、機械加工を行うのが非常に困難です。さらに、超精密加工で用いられるダイヤモンド工具は激しい工具摩耗を起こしてしまうため、SiCの加工をナノレベルで行うには特別な工具が必要になります。
また、難削材としては有名どころである、超硬合金やタングステンに関しても、頻繁にお問い合わせをいただく材質として挙げられます。
ここまでコラムを読んでいただいているあなたのように、多くの皆様が「この難削材の超精密加工は厳しいよな…」と思いながら、様々なサプライヤーを探しています。しかし当社としては、「その超精密加工はオーバースペックである」という立場で、多くのお客様が困っている現実を課題としています。
よくよくお客様のご要望をお伺いしていると、あまり加工や設計のことに詳しくないために、部品全体を過度な精度で図面を引いている場合があります。そして当社が過剰設計の箇所を修正するようにご提案すると、多くの部品加工が超精密加工ではなく、精密加工と超精密加工の中間にあたる「高精密加工」と言われる領域になります。
実際当社では、ある東証一部上場企業様から部品加工の依頼を受けた際にも、一部のみの超精密加工でよいと判明したために、従来の過剰設計から大幅にコストダウンすることに成功した事例もございます。
特に難削材の場合は、基準以上に高精度な加工が必要なのでは?と思いこんでしまっているケースが多く見受けられます。しかし実際のところは難削材の「高精密加工」レベルでよいという場合が多いのも事実です。
形状ごとの超精密加工
超精密加工といっても、その目的とする形状によって加工方法は様々です。
超精密加工の代表的な用途としては、超精密レンズ金型があげられます。光学業界では、レンズ金型の精度がレンズの品質を決めるといっても過言ではありません。そのため多くの企業が、いかにレンズ金型を超精密に加工するかを日々研究しています。
特に近年では、非球面レンズやマイクロレンズアレイの需要が高まっているため、これらの金型の超精密加工のニーズが高まっており、当社でも非常に多くの技術相談を受けております。
また近年増えているのが、光学ミラー加工や、ミラー金型の需要です。先ほど鏡面加工が超精密加工の特徴と取り上げましたが、この点がミラー加工に大きく寄与します。
通常光学ミラーの加工のためには、研磨加工やラップ加工といった加工が必要となります。しかしこれらの加工は時間的にも費用的にも非常に高価となります。
しかし当社が行うような切削・研削などの機械加工による超精密加工であれば、自由曲面などの複雑な曲面のミラーであっても鏡面加工を行うことができます。
当社の事例では、離型性を考慮した平面ミラーや、光学装置向けの曲面ミラー、ヘッドアップディスプレイ用のミラー金型など、様々な光学ミラー加工を行ってきた実績がございます。
>>ヘッドアップディスプレイとは? 特徴から金型製作事例まで
さらにフレネルレンズ金型、リニアフレネルレンズ金型に関するお問い合わせも近年は非常に多くなっている実感が当社にもございます。レンズの軽量化や小型化が進んでいるため、これからのフレネルレンズの需要は高まっていくものと想定されます。
超精密加工を行うには、ナノレベルの加工を行うための設備環境が必須!
工作機械の母性原理に従うのであれば、「高精度な部品を加工するためには、その部品よりも高精度な分解能で加工を行うことができる」超精密加工用の工作機械が必要になります。
しかし超精密工作機械を保有している加工サプライヤーは限られているため、工作機械から加工サプライヤーを選ぶことが超精密加工を実現するためのポイントの1つと言えます。
また、超精密加工を量産体制で行うためには、安定して1マイクロメートル未満のスケールでの精度を出すことができる、ナノレベルの加工精度を生み出すことができる設備環境が必要になります。
>>超精密立形加工機「UVM-450D(H)」での加工事例を紹介!
>>【動画付き】非球面加工機「ULG-100D(SH3)」での加工事例を紹介!
さらに、超精密加工領域では測定による保証が非常に重要となります。超精密加工では超高精度な三次元測定機が必要になりますが、これは超高精度を求められる形状に対する加工への形状誤差に対する補正の為のフィードバック、および完成形状に対する保証するためです。
きちんと超精密測定まで行い、ナノレベルの加工に対する保証ができる企業に超精密精密加工は頼みたいものです。
高精密加工・超精密加工は、超精密・ナノ加工センターにお任せください!
超精密・ナノ加工センター.comを運営する株式会社木村製作所では、超精密加工に特化した「ナノ加工研究所」にて、日本屈指の超精密加工を行っております。超精密レンズ金型・マイクロレンズアレイを中心とした加工実績も多数ございます。
また当社は、チタンなどの難削材加工も得意としており、超精密とまではいかないものの寸法精度±0.001 mmが求められるベアリングやシャフトなどの機械部品に対する高精密加工に対応しております。
さらに、お客様の過剰品質の設計を防止するために、あらゆる角度からVA/VE提案をいたします。ナノレベルはマイクロレベルとは異なるノウハウが必要とされますが、どちらにも対応することができる当社だからこそ、最適な品質設計をお客様に提案することができます。
高精密加工・超精密加工にお困りの方は、超精密・ナノ加工センター.comまでお問い合わせください!